『血2』

(筆者:生出 拓郎)

前回に引き続き『血』の内容ですが、特に今回は血の変化による病証について見ていきたいと思います。血の病証は ≪血の不足、流れの滞り、出血≫を指します。

①血虚(けっきょ)
体内の血生成の低下、あるいは出血過多により血が不足した状態です。一般的には下記のような症状が表れます。

□顔色が悪く白い、またはつやがなく黄色い □ 肌や目が乾燥する□髪につやがなく、枝毛・抜け毛になり易い □ めまい、ふらつきがある□爪の色が薄く、折れ易い □ 動悸がよくある□眠りが浅く、よく夢をみる □筋肉がピクピク動いたり、痙攣したりする   ≪女性の場合≫
□月経血の減少□月経の遅れ□無月経
 主に上記のような症状が現れたら血虚のサインと考え、漢方では血を補う≪補血薬(ほけつやく)≫の服用をお勧めします。『四物湯(しもつとう)』を基本とし、『婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)』『帰脾湯(きひとう)』『参茸補血丸(さんじょうほけつがん)』など多数の処方があります。

②血お
基本的には≪循環の停滞≫を指し、具体的には微小循環の障害、血液成分の異常、外傷や炎症による出血やうっ血などを意味します。中医学の視点により、原因を6つにわけ分類すると以下のようになります。

基本的な血おの症状は以下のようになります。

□肩こりがひどい □ シミやそばかすが多い□よく頭痛がする □ あざが出来易い□唇や歯茎の色が暗く、黒っぽい □ 便が黒っぽい□肌のくすみが気になる □ ポリープが出来易い□舌の色が暗くて、紫色である □ 針で刺されたような痛みがある
≪女性の場合≫                     □生理痛がひどい □ 子宮筋腫や内膜症がある□よく頭痛がする □ あざが出来易い□月経血が赤黒く、レバーの様な塊が混じる
 主に上記のような症状が表れますが、共通して言えるのは≪痛み・しこり・黒ずみ≫の三大症状です。こういった血おの症状には、上記にあげた6つのタイプ別の根本治療の他、血液の流れを良くする≪活血薬(かっけつやく)≫を使います。代表例としては『冠元顆粒(かんげんかりゅう)』『血府逐お湯(けっぷちくおとう)』『桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)』『桃核承気湯(とうかくじょうきとう)』などの処方があります。

③出血
出血は、大きく分けて血熱(けつねつ)・血お(けつお)・気虚(ききょ)による3つの原因により発生します。

(1)血熱
血熱には実熱(じつねつ)と虚熱(きょねつ)があり、実熱は外からの熱性の興奮が加わり、炎症性の症状と共に出血するものです。出血以外では主に以下のような症状がでます。
□ 顔が赤くなる □ 唇や結膜が赤い□ 目の充血 口 や喉の渇き □ 発熱(主に夜間) □ 発疹

上記のような実熱による出血を血熱妄行(けつねつもうこう)といいます。このような症状に使う処方としては『涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)』『槐角丸(かいかくがん)』『大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)』などがあります。

実熱とは別に体の潤い不足により、見かけ上、熱を伴う症状を虚熱と言います。
目に見える症状は実熱と似ているものの、虚熱の出血は慢性的に反復し、量も少量です。
根本的には体の水分不足により、自ら体を冷ますことができずに、オーバーヒートしている状態です。また血液の粘度が増大し、滞ることにより出血を引き起こします。
虚熱には『杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)』『知柏地黄丸(ちばくじおうがん)』『麦味地黄丸(ばくみじおうがん)』などが使われます。

(2)血お
②で記載した血おによっても、うっ血性・凝固性の出血が表れます。

(3)気虚
既に学習した『気』の機能のうちの固摂作用の低下により出血します。主に『帰脾湯(きひとう)』『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』などを使います。

以上が血の変化による主な病証です。次回は『津液』についての内容になります。