先日、日本中医薬研究会主催で、武漢での新型コロナウィルス感染症(COVID-19)治療に貢献された、中国工程院院士・中国中医科学院名誉院長・天津中医薬大学学長「張伯礼(ちょうはくれい)医師」を講師に迎え、Web交流会が開催されました。当日は、全国の薬剤師や医師など約730名が参加し、質疑応答も活発に行われました。今回はその内容をご紹介します。
まず、これまでの治療に携わってわかったことは、COVID-19は、様々な感染症の中で「湿毒疫」に属するものであるとのこと。これが、主に肺(呼吸器系)と脾(消化器系)を損傷し、他臓器に影響を及ぼしていきます。「湿」とは、体内に生じる不要な水分で、痰や鼻水などもこれに含まれます。
COVID-19に感染した場合、発熱や咳の症状など軽い風邪の症状から始まり、その症状が一週間くらい続き、大半の人がそのまま軽快します。でも、一部の人に、その後倦怠感や息苦しさが出てきたり、体がむくんだり下痢の症状がでてきて、急に重症化し、死に至る方もいます。これらの「痰」「だるさ」「むくみ」「下痢」などの症状は、すべて「湿」によるものと考えられます。そのため、「湿」を取り除く漢方薬を早期から服用することが、症状を改善し重症化を予防するためにはとても重要です。
また、張先生は、「「瘀血」は「湿邪」を停滞させ排出しにくくするため重症化しやすくなる」と、「瘀血」の人にはこの治療も重要だと強調されていました。「瘀血」とは、血液の滞りで、血液循環の悪い状態。実際に、高血圧や糖尿病、腎臓病など基礎疾患がある人が重症化しやすいといわれているのは「瘀血」体質であるからで、これを治療することはとても大切であることがうなずけます。
中国では、COVID-19 の治療において、既に7万人以上に漢方薬が使用され、それによって病気の進行が抑えられました。このように漢方薬の有効性が数多く報告されています。
もし、COVID-19にかかってしまったら、中医学があることを思い出してください。そして、ぜひご相談ください。漢方薬は症状にあわせて服用することが大切です。
次は、予防法について書いてみたいと思います。