『陰陽説』

中医学の基本であり、最も重要な概念が“陰陽説”です。
陰陽説は古代中国に広くゆきわたっていた思想で、宇宙間の一切の事物や現象を陰と陽に分けて考える概念です。また陰陽間には陰陽対立・陰陽互根・陰陽消長・陰陽転化と言った相互関係があります。

1.陰陽対立
一切の事物あるいは現象は対立した2つの側面を持ち、一方の側面を“陽”とすると他方が“陰”となります。

分類

空間

時間

季節

性別

温度

重さ

明暗

運動状態

春夏

熱暖

軽い

明るい

上昇
外向
運動

秋冬

寒涼

重い

暗い

下降
内向
静止

 

 上記のように分類された事物は更に陰陽に分類できます。例えば、陽に属する昼間でも、午前は陽、午後は陰に分類することができます。このように、限りなく分ける事が可能な事を“陰陽可分”と言います。また人体の部位や病気の性質も下記のように分ける事ができます。

分類

部位

組織構造

生理機能

病変の性質

表 背部 上部

皮毛 六腑
気 衛

興奮 亢進 活動

表証 実証 熱証

裏 腹部 下部

筋骨 五臓
血 営

抑制 衰退 静止

裏証 虚証 寒証

 

2.陰陽互根
陰陽間の相互依存の関係であり、一つの側面が存在してはじめて、もう一方も存在すると言う事を示します。つまり“陰”と“陽”は単独では存在しえず、“陰”が“陽”を生み、或いは“陽”が“陰”を生む事をあらわします。

3.陰陽消長
陰陽はいつも静止不変の状態にあるのではなく、常に消長という形式に基づき、変化・進行しています。例えば、一日の動きで見てみると、朝から夜になるに従い、温熱(陽)は徐々に減り、反対に寒涼(陰)は徐々に増加していきます。これを“陽消陰長”と言います。これとは逆に夜から朝に向かう陰陽の変化を“陰消陽長”と言います。

4.陰陽転化
陰陽は一定の条件下で“陰”が“陽”に、“陽”が“陰”に転化する事があります。
例えば、高熱が持続的に続くような疾患の時に、突然体温が降下して顔面蒼白のショック状態になることがあります。これは“陽”が“陰に”転化した事を示しています。
このことを『熱(陽)極まれば寒(陰)を生ず』と言います。

中医学では上記のような陰陽の概念や関係を、人体の組織や機能、または疾病の特徴などに応用しております。