『気2』

(筆者:生出 拓郎)

今回も前回に引き続き『気』についての内容になります。気にはどんな種類があり、また気の変化によって、どのような病証が生じるか見ていきましょう。

3.気の分類
  全身に分布した気は、その作用を発現する部位によって、異なる名称で呼ばれています。

元気(げんき)(原気・真気)
全ての気の根本であり、腎精(じんせい)から生じます。腎気(じんき)・腎陽(じんよう)・命門(めいもん)の火とも呼ばれ、先天的に備わっている気です。生命体の根本的な推動力や生命エネルギーに相当します。

宗気(そうき)
胸中の気で、脾胃からの水穀の気と肺の清気から作られ、いったん胸中に集まった後に、全身に分散されます。肺の呼吸機能と心臓の循環機能を指しています。

衛気(えき)
脈管外をくまなく運行する気で、三焦を通じて内側は臓腑に、外側は皮膚・筋肉に分布しています。体表を保護して外邪の侵入を防止し、汗腺・立毛筋を調節して体温を調整し、臓腑を温め皮膚を潤滑に保つ機能があります。衛や衛陽とも言われています。

営気(えいき)
脈中にある気で、血とともに循環し、血を生成し全身を栄養・滋潤します。営・営陰とも言われます。

臓腑の気
各臓腑の機能の事で、心気・肺気・脾気・肝気・腎気などと言われます。

経絡の気
経気とも言い、経絡の伝導・転輸の機能を指します。

その他
他にも具体的な事物を表すものがあり、例えば飲食物を消化吸収して得た栄養物質を水穀の気、体内に発生した異常な水液を水気、病気を発症する因子を邪気、不要な老廃物を濁気などと言います。

4.気の病証
   気の病気には大きく分けて、気(き)虚(きょ)と気滞(きたい)の二つあります。

気虚(ききょ)
気の不足あるいは気の機能の減退、つまり臓腑機能の低下や、抵抗力の減退などを指します。気の生成に関しては、脾胃の関与が大きいため、気虚の中心になるのは脾胃気虚であるといえます。

          

 

症状

舌診

治法

代表方剤

 

脾胃気虚

元気がない、気力がない、言葉に力がない、汗をかきやすい、息切れ、食欲不振、お腹がはる、泥状便など

舌質淡白
舌苔白
(舌が淡くて白い)

 

補気健脾

四君子湯
六君子湯
星火健胃錠
星火健脾散

気滞(きたい)
気の巡りが停滞していることを指します。現代医学における、自律神経の失調による症状と同じように考えられます。
主にストレス、病邪の感染、外傷、飲食の不摂生(暴飲暴食)などによって生じます。また、気虚によっても全身を巡る気の相対量が不足のために気滞を招きます。
症状は発症する場所によっても変化しますが、はりがあって痛んだり、肉体的にも精神的にもスッキリしなかったり、ムカムカしたりするような症状が多くみられます。  

          

体の構成成分である『気』について大まかに理解した上で、今後は『血』や『津液』との関係、そして各臓腑における細かい働きや、病変などについても見ていきたいと思います。