『津液(しんえき)』

(筆者:生出 拓郎)

今回の『津液』は、『気』『血』に比べるとあまり聞きなれない言葉ですが、日本では良く『水(すい)』と表現される事があります。津液とは、体内に存在する『血』以外の正常な水液の総称です。
主に体液を指しますが、汗・唾液・腸液・尿などの分泌物や排泄物も含みます。
また津液は厳密に言うと『津(しん)』『液(えき)』に分ける事が出来ます。

『津』… サラサラとしていて、薄く流動性が大きい。体の内外問わず全身に潤いを与えている液体。
皮膚や粘膜などの表面上の潤いを保ちます。 『液』… ネバネバしていて、濃く流動性が小さい。主に骨・関節・臓腑・脊髄・脳などの組織に潤いを
与えます。

以上の事から津液は西洋医学的には、細胞内外の液、唾液、胃液、腸液、関節腔や腹腔内の液、汗、涙、尿などのすべてを含めた組織液に相当します。

【1】津液の生成と代謝

  1. 脾は水穀(すいこく)から有益な水液を吸収し、津液を生成する
    水穀の精微:飲食物から消化吸収した栄養物
    運化水液作用:水穀の精微から津液を生成し、全身に運ぶ機能
  2. 脾は津液を上焦の肺や全身に運ぶ
    昇清作用:上焦にある心(しん)や肺に運ぶ機能
  3. 肺は津液を上気道や体表に運んで発散させる
    宣発作用:スプリンクラーの様に上焦より全身に散布する機能
  4. 肺は津液を、三焦を通して全身に分布して、下焦の腎に運ぶ
    粛降作用:水穀の精微や津液を下焦にある腎に運ぶ機能、また肺中の異物を取り除き清潔な状態に維持する機能
    通調水道作用:脾から肺、肺から全身、そして腎・膀胱に運ばれて排泄されるまでの全通路の流れが滞らないように調節する機能
  5. 腎は再利用できる津液『清(せい)』を上昇させ、肺や全身に運ぶ
    蒸騰気化作用:各臓腑の代謝を受け下降してきたもののうち、有用なものは再度上昇させ、不要なものは下降させる機能
    *なお、清濁を分けるのは小腸の働きによるものです
  6. 腎は再利用できない津液『濁(だく)』を下降させ、膀胱を通じて体外へ、尿として排泄する

上記のように人体の津液は飲食の摂取量、津液の生産と分布、水分の排泄などによって一定に保たれています。津液の代謝は多くの臓腑が関与していますが、主となるのは・脾・腎の3つです。

【2】津液の機能
津液は主に滋潤の作用を持ちます。体表部に散布して、皮膚・毛髪などを潤し、涙・唾液などを腺分泌液として粘膜を潤します。更に臓腑を滋潤し、関節液として働きを円滑にします。

 今回は津液の生成や運行が中心の内容でしたが、次回は津液の病症や気や血との関係性などを見ていきたいと思います。