『津液(しんえき).2』

(筆者:生出 拓郎)

今回は主に津液(しんえき)の病証についての内容ですが、病証自体は非常に多いものの、一般的には不足と停滞の2種類に分けられます。

【1】 津液不足(津虚)

前回ふれた津液の作用である滋潤作用(じじゅんさよう)の不足により、各種組織の乾燥症状がみられます。
喉の渇きや、尿量減少、便秘などの症状が主に出ます。原因としては、激しい下痢や嘔吐、発汗過多、過労、利尿薬の使用過多、慢性病による消耗などたくさんありますが、程度により「傷津(しょうしん)」「脱液(だつえき)」に分けられます。

 

「傷津」・・・津液が一時的に消耗されすぎた為に滋潤作用が減退したもの
「脱液」・・・全身の陰液が大量に消耗されているもの

 

【2】 津液の停滞(湿・痰飲・水腫)

津液の代謝に障害が生じると、津液が停滞してしまい、体に不要な邪として異常な水液に変わります。
軽度なものを湿(しつ)あるいは水湿(すいしつ)、程度が進んだものを痰飲(たんいん)・水腫(すいしゅ)と言いますが、明確な区別はされていません。 原因としては、発汗障害、腎機能障害、電解質のバランス異常、循環障害、免疫異常など様々あり、それらにより細胞や組織の内外に停滞した液体と考えられています。

津液の病証は細かく分けると限がありませんが、大まかに言って上記の2点のどちらかが原因になって起こります。漢方治療では、津液不足に対しては、潤いを補う生薬を中心に服用し、津液が停滞している場合には、尿や便として排泄したり、汗をかく事により発散させたり、血行を良くし代謝をあげたりすることにより余分な水液を除きます。

またこれまでに述べた気・血・津液は互いに関連が深く、治療においてもその関係性が応用されることが多いため、ここで簡単にまとめてみたいと思います。

<1>

気と血の関係
気が十分に作用を発揮するには血の濡養作用が必要であり、逆に、血は気の気化作用によって生成され、気の推動作用固摂作用によって全身を循環し、濡養できます。この関係を『気は血の帥(すい)、血は気の母』と言い、両者の密接な関係を表しています。

<2> 気と津液の関係
津液は気の気化作用によって生成・排泄され、固摂作用によって体内に保持され、推動作用によって全身に運ばれます。
病理的には、気の気化作用が障害されると津液の代謝が停滞し、異常な水液である水湿・痰飲・水腫などが体内に貯留し、逆に気の運行を妨げる事になります。また急激な下痢・嘔吐・発汗などで大量の津液が失われると、同時に気も一緒に消耗されてしまいます。

記の他にも血と津液の関連もあるのですが、その関係にはも関わってくるので、次回『精(せい)』について学んでから、また振り返ってみたいと思います。