病因シリーズ③『湿邪』
(筆者:高橋 裕子)
第3回目は湿邪について解説します。湿邪は湿度の高い時期を想像するとイメージしやすく、症状としては、なんとなく重だるい、すっきりしない、人によっては痛みが出ることも…。
《湿邪の特徴・病証》
① 沈重性がある(湿邪は重いので、湿邪におかされた部位が重い、重だるいなどの沈重感を伴う症状があらわれます)
具体的にはからだや手足、頭が重だるい、痛みがあるなどです。
② 下を犯す(湿邪の沈重性は下降性ももち、下半身、下肢に流れ込みやすいのです)
たとえば膝が重い、脚が重い、下半身がむくむなどの症状をあらわします。
③ 定着する(湿邪は定着性が高いために、いったん体内に侵入するとなかなかとり除くことができません)
症状が長引く、なかなか治りにくいという特徴があります。
④ 粘膩である(粘膩とは粘り気があり汚いことを指します)
痰がネバネバする、汗がジトジトする、大便がベトベトして便器を汚す、舌苔が厚くネバネバして汚い(舌苔膩)などの症状があらわれる。またジメジメした雨の日や湿気の強い日に症状が悪化する特徴があります。
⑤ 脾を傷りやすい(湿邪が体内に停滞すると、脾の運化機能を妨げやすくなります。もともと、脾は乾燥を好み、湿気を嫌う臓腑です)
具体的には食欲が落ちる、腹がつかえる、悪心、嘔吐、手足がむくむ、手足が重いなどの脾の運化失調の症状をあらわします。
⑥ 気の運行を妨げる。(湿邪は同じ場に停滞しやすく、その気の運行を阻み、痛みを発生させやすいのです)
例えば関節の腫れと同時に、気が運行停滞するため張った痛みがでることもあります。
《湿邪の病証》
① 湿邪が表に侵入した時の症状…
頭痛、頭重、発熱、汗が出ない、あるいはジトジトの汗が出るなど。
② 湿邪が皮膚に停滞した時の症状…
湿疹、湿疹は少し盛り上がり、掻き壊すとジュクジュクし、皮膚がジメジメするなど。
③ 湿邪が経絡や関節に停滞した時の症状…
重だるい痛み、痛む場所が一定する、関節痛、関節の腫脹、運動制限、あるいはしびれる、ジメジメした日に悪化するなど。