『気』
(筆者:生出 拓郎)
今回は人体を構成する基本的な物質で、生命活動を維持する働きのある≪気・血・津液・精≫の中の『気』についてです。気は『陽気』とも言われ、人体の各種の生理機能に相対します。
1.気の生成と名称
気には以下のような物質的な面と機能的な面の二つの意味があります。
①人体を構成・維持し、全身をめぐっている生命活動になくてはならない精微物質
②臓腑、組織、経絡などの生理活動
気は主に3つの場所で生成され、それらが結合して構成されます。
清気【肺】
→空気のことで、肺のガス交換により血中に入ります。
後天の気…水穀の気【脾】
→飲食物を消化吸収して得られた栄養物質。
先天の気…精気【腎】
→生長、生殖等の生命エネルギー。父母より受け継がれます。
『気』=精気+水穀の気+精気
2.気の機能
気には様々な機能形態がありますが、以下の五つの作用にまとめる事ができます。
①推動(すいどう)作用
生長と発育、全ての組織、器官、あるいは臓腑・経絡の生理活動、血液循環、神経活動、体液の輸布と代謝などを推進します。
②温煦(おんく)作用
エネルギー代謝や循環機能を行うことによって、体温の維持、調節をします。
③防御作用
病邪の侵入を防止し、侵入した病邪に抵抗して排除します。また、治癒力、回復力を助ける働きをします。
④固摂(こせつ)作用
血液を脈管外に漏らしたり、汗や尿が排出過多になったり、精液が漏れてしまったりするのを防ぎ、統制します。
⑤気化作用
気の運動変化を通じて行う一連の物質転化の機能です。飲食物から気・血・津気を生成する所から始まり、気を血液にしたり、津液を尿または汗に変え排泄までを司る働きです。
『気』は目に見えないものですし、説明には少し難しい言葉もありますが、日頃から『元気がないね?』、『気が滅入る』、『気力が漲る』など『気』と言う言葉を無意識に使用していますし、感覚で理解しているかと思います。この『気』が不足したり、流れが悪くなると、いろいろな病証が表れます。