『咳』~セキ~
(筆者:川那辺 貴弘)
今年の秋は『咳(せき)』『痰(たん)』など喉のトラブルでお困りの方が非常に多いようです。
もともと秋から冬にかけては湿度が急に下がるため、粘膜で守られている『気道』つまり喉は傷つきやすくそのために肺や喉の様々な症状が出やすい時期と言えます。
特に今年は夏がとても暑くエアコンを使う頻度が多かったため夏に喉を痛め、秋の乾燥した空気で症状が重くなってしまう方が非常に多いようです。
『咳』自体は気道上から異物を排泄して体を病気から守ろうという一種の防御反応ですが、過剰な反応による咳は体に負担となってしまいます。
今回は『咳』について簡単に『乾いた咳』と『痰の多い湿った咳』とに分けてご説明いたします。
『乾いた咳』 エアコンの使用や秋から冬にかけての急激な湿度の低下により上気道の乾燥が起こり、喉に違和感や掻痒感が出てきます。
特徴はコンコンという『乾いた咳』です。場合によっては風邪を引いて発熱をしたり、鼻腔から鼻の粘膜の炎症も引き起こして副鼻腔炎を患う方もいらっしゃいます。
空気の乾燥はなかなか対処が難しく、初期の対応が重要になります。
喉に潤いを与える漢方としては『麦門冬湯(ばくもんどうとう)』がございます。
しかしこれだけでは炎症には対応できないので『天津感冒片(てんしんかんぼうへん)』を併用してみるのも良いと思います。
また喉の炎症と乾燥のある場合には『潤肺糖将(じゅんはいとうしょう)』と言うシロップもございます。
咳がひどい場合には『滋陰降火湯(じいんこうかとう)』などもございます。
『痰の多い湿った咳』 風邪のため特に上気道の炎症がひどい場合やその病後に出てくる症状です。
炎症がある場合は黄色い痰が、炎症が落ち着いた時は白や透明な痰が出てくるのが特徴です。
炎症がある場合は『天津感冒片』や『駆風解毒湯(くふうげどくとう)』などをまず用いますが、炎症が治まってきたら『蘇子降気湯(そしこうきとう)』や『柴朴湯(さいぼくとう)を用います。
痰が多い場合は『清肺湯(せいはいとう)』を用います。
咳への対処は現在の症状だけでなく咳が出てしまうまでの『過程』も考慮して考える必要があります。
特に風邪がこじれたり、風邪が長引いたために咳が残ってしまう事もございます。
中国では秋に『ナシ』やこれからが旬の『リンゴ』などを上手に調理して喉を守るために食べますが、こじれてしまった場合は『冬虫夏草(とうちゅうかそう)』なども用いるそうです。
加湿器などで室内を喉に優しい環境にして不快な咳を早く改善しましょう。
注意*今回は『咳』について書きましたが、有名な『葛根湯(かっこんとう)』や『小青竜湯(しょうせいりゅうとう)』はあえてご紹介しておりません。理由はいずれの処方も『感冒』のための処方で『咳』のための処方ではないからです。『葛根湯』『小青竜湯』はいずれも強めの処方なので咳を一時的に止めるのであれば使うこともございますが、長期にわたり服用するものではございませんのでくれぐれもご使用にはご注意ください。