『汗』
(筆者:生出 拓郎)
夏に近づき、薄着が増えると気になるのが『汗』ですね。汗は誰もがかくものですが、少し異常な汗に悩まされている方も、意外に多いようです。
中医学では『汗は心液』あるいは『汗血同源』といわれ、とても大事なものと捉えており、体の陰陽のバランスと密接な関係があります。
【汗の種類】
① 自汗(じかん):日中に出る汗で、気温や服装、活動量にかかわらず、しきりに汗が出る。
② 盗汗(とうかん):夜間に出る寝汗で、寝ている間は汗が出て、
目が覚めると汗が止まっている。
③ 脱汗(だっかん):大量の汗やあぶら汗で、手足の冷えや息切れなどを伴う。危篤状態の時に
見られるため、『絶汗』ともいわれる。
④ 戦(せん)汗(かん):風邪などの病気の時に、悪寒の後に突然出る汗。
⑤ 黄汗(おうかん):黄疸などに伴う黄色い汗。
*上記以外にも更年期障害や自律神経失調症、甲状腺機能亢進症など様々な病気に伴う汗もあります。
今回は上記の5つの中でも、頻繁にみられる『自汗』と『盗汗』の原因をより詳しくみていきましょう。
【病因と漢方薬】
① 肺気不足
虚弱体質や病中病後、咳・喘息など肺の病気に罹っている人に多くみられます。
肺気の不足により、体表の衛気が少なくなり、固摂作用が低下し、(詳しくはかんたん中医学の『気』と『肺』を参照)汗の分泌を調節する機能が乱れ、汗が外に溢れ出してしまいます。
肺気不足の汗は『自汗』に属します。
漢方薬:衛益顆粒、麦味参顆粒、補中丸など
② 衛営不和
脈中をめぐり、全身を栄養する『営気』と、脈外をめぐり体を防衛する『衛気』のバランスが崩れて汗が出てしまいます。衛気が不足したり、外邪に抵抗したりしている時に起こります。
自汗・盗汗の両方の症状がでます。
漢方薬:桂枝湯、桂枝加竜骨牡蠣湯など
③ 陰虚火旺
体の潤いが不足すると、陰陽のバランスが崩れ、虚火が生じます。この熱が津陰を体外に押し出すために汗が出ます。
主に盗汗が多いですが、夕方に微熱が現れ、手足などの熱感を生じることもあります。
漢方薬:知柏地黄丸、杞菊地黄丸など
④ 湿熱鬱蒸
飲食の不摂生や、湿気が多い時期などにより、胃腸の働きが低下して、体内に湿熱が停滞してしまいます。この熱が湿を蒸しだして汗が出ます。
熱感を感じる汗が多く、午後や夕方に症状が出やすいです。
漢方薬:瀉火利湿顆粒、茵陳五苓散など